2017年8月14日月曜日

どっちもどっちだぜぃ!


「こんちわー。」
カポタストなんかそうそう忘れるもんじゃないんだけど、実際ギターケースを開けて見たら入っていない。去年も入っていなかった。釧路はカポタストを忘れてくるところなんだなあ。
 しょうがないんで、携帯の検索をかけて見ると泊まっているホテルの近所に楽器屋があるらしい。携帯で何かを検索するというのは普段ほとんどやらない。便利なのはわかってるんだけどやらない。別に理由はないんだけど、やらない。一緒に番組やってる藤井はひっきりなしに検索する。ラジオのディレクターだからというのと、僕が適当に喋って責任取る気配がないもんだから、情報や記憶に関することをしゃべるとこまめに検索をする、職業病だな、可愛そうに。そのおかげで今の所事故がないんで感謝してるけど。
 その検索だけど、どうやら啄木通りという道路沿いにその楽器屋はあるようだ。

途中古いだろうと思われるギャラリー兼カフェがあって、その通りの面目をすごく立てている。
ギャラリーとかカフェという建物はその出現でその界隈のグレードを一気に引き上げる効果があり、これがパチンコ屋とかスマートボール屋だと少し荒む気配が漂い、旅人にはいい脱力感をもたらすんだけど、勝手言わせてもらえば今日のところはギャラリーカフェ。
街を歩いて久しぶりに「ああ、この通りはとても自分の好きな気持ちに手が触れられる通りだ。」と人に聞かれたらヒイェーと言って逃げられそうなことをうっかり言ってしまう。
「こんちわー」
外から見ると楽器屋には見えない。
昔懐かしい駄菓子屋みたいな風情、駄菓子屋と違うところは戸が開いてないし、中が暗い。楽器屋さんのニューウェーブと言えなくもない佇まい。ニューウェーブというのはだいたい新しいからニューというんだけど、ここは一風変わっているという意味でのニューウェーブ。
さっき言った(言ってないけど)時間が瓶に入って外界と触れていない感じ、大島渚の映画に出て来そうな粒子の粗い世界のような、そう簡単には言い表せない空間感。
店はひらいてるのに店の人はいない。
もう一度呼びかける。
「コンチわー。」
             ・・・・・
「はい。」
びっくりした。
すぐ近所にいた。
             ・・・・・
「カポタストありますか。」
店の主人だね、どう見ても。
「カポタストはギターの、このフレットに挟んでですね、キーを変えるものでですねえ、古くはゴムのものから最近はバネがついて収まりやすいのまで。ギターはですねえ、フォークギター、クラシックギター、エレキギターとあってですね・・・・」
結構長い時間カポタストのレクチャーを受ける。主人は僕を、年取った男がギターを弾きだして、ようやくカポタストの必要性に迫られて買いに来たと思ってるようだ、と後になって気がついた。その時は、普段、楽器屋に気軽にカポタストを買いに行き、まさかカポタストの講義受けることなんてないから僕自身も結構怖じ気ついていたのかもしれない。
店にある商品をガラスケースに全部並べてくれた。
普段楽器屋でカポタストを全部並べてもらって買うなんて経験したことがなく、大体は自分で適当に見繕って、これって感じで買うのが習慣になっているので、今度は迷う番がやって来た。大体持っているものだし、珍しいものはなく、こうやって丁寧に並べられて、さあ、どれにする?って言われると思いの外判断できない。
帰り際、ガラガラの戸を閉めてふと貼られているフライヤ見ると、僕のえいが館でのものだった。なんかウェルカム、ミステリーゾーンだった。ロッド・サーリングだな。

えいが館のサオリさんに聞いたら昔からある楽器屋さんで、ご主人は僕よりも年齢が上でどっちもどっちだねって。
サオリさんは今年も元気に健気にえいが館頑張っていました。霧の街、古い映画のようなロマンティックでミステリーゾーンで時間の瓶詰めみたいな街でのライブ、楽しかったです。安藤さんに「幸男さん、声出てるね、年取ってから。」と褒められました。安藤さんは声出てない頃から知っている人で、デビューした時から応援してくれてた人です。その当時、楽屋に訪ねてくれた時の肩組んでる写真あるので機会あったら見せてあげたいなあ。
 


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