2022年4月11日月曜日

旅日記パート2 あながちない話ではないんだ。



帰りは常磐道を走って帰ることにした。

同じ道で帰ると言うのもなんかつまらないし、それにまたもう一度走るかどうかわからないのなら別のルートに乗る方が違う景色に出会えるし。

高速に入る頃にはもう夕景色だった。左側の線量計モニターには現在の放射線量が地域ごとにデジタル表示されていて、時により、動くこともあるんだろうけど、僕らの帰途にはそう大きな変化はなかった。それにしてももう11年経つというのにまだこの表示は出されっぱなしみたいだ。左側に海が見える、福島というだけで何かの痕跡を探そうとする。風評被害てこういう感覚も含めていうんだろう。夕闇に浮かぶデジタルの表示、もう消せばいいのに。

僕らは夕食を水戸で摂ろうと決めていた。朝はカツサンドと羊羹パン、昨日バック イン タウンでもらったお菓子類、2時過ぎに福島の高速で食べたカレー、夜くらい少しまともなものをと思ったけど、如何せん土地勘が全くない、名物も知らない、携帯で調べることもしない、ただ自分たちの知識を総動員をするだけ。水戸。納豆。二人して出て来たのがこの二つの単語。水戸に行けば何かあるのだろう。

水戸に行っても何もなかった。というよりここまで来たらもう千葉まで走り切ろう。千葉までがこれか先どのくらいあるのかもあまり知らなかったと思う。ただひたすらナビが命じるママにあっち行けこっち行けに従う長距離ハイになっていて外の夕闇にハマってた。コンソールライトにうっすらと照らされている目黒さんも朝に捕獲された傷跡はなく、今はシリアスをまとって運転している。

真っ暗な高速から少しずつライトが増え始め、車の量も増え、車線も片側3車線の立派な都会型高速道路に成り上がっていく姿もいい。車や電車の乗っていていつも思うことがある。目的地ってこの道路の向こうに必ずあるんだけど、そこにたどり着くまでは1歩1歩にじり寄っていくと思うか、こっちが力技で引き寄せるか?いつの頃からか道路を引っ張って、向こうを手繰り寄せているんだの感覚に変わっている。特に遠い道のり最中は。えい、えい!って。


一夜明けて撮影。

佐久間監督は初対面の人です。弁天の森公園の桜をバックに撮影から始まりました。

デビューの時に「君は風」のPVを箱根で撮って以来かもしれない、こうやって自分が参加して音楽に合わせて撮影機器を回すということは。会って挨拶もソコソコに(僕の一番好きなパターンかもしれません、いきなり本題に入るパターン)撮影が始まった。

「桜をバックに花火が上がります、夜にそれを押さえたいと思います、花火はなんとなく、今打ち上がっている大砲の砲火に見えるといいなと思っています。政治的にどうのというのでもないですけど、どっちかというと記録的、かつ自分の心情として。」「花咲く曲がり角」にそういった背景があるかといえば全くないんだけど、時代的には70年のベトナム戦争か?それにしてもそのことは背景としてはあったけど、それと、遠い風景としても見えてたけど僕らには意識されないものだった。でも、微妙に符合するところがあるので面白いなあと思った。

「花咲く曲がり角」撮ろうと思った理由を僕は聞いていない。

「a light」「bookend2」の2枚の中から選んでもらったのがこの曲だった。映像作家が考える、受け止める「曲」ってどれなんだろうという興味はあった。「花咲く曲がり角」はある意味ストーリーがあり、映像で被せられるものにはどういった方法があるんだろうと最初に思った。

僕は佐久間さんにただついていった。創り手が意図を持って進む時にはまずは監督の意に沿うことなんだろうし、僕にそれを翻すだけの経験はない。

ドローンが遠く腰の高さからこっちに向かって飛んで来て、数メートル手前で空に上がっていく。映像見ていないのにその絵が見える。それだけでも僕の写真の中にはない。楽しみだ。

昔、ジャケットの写真をタムジンと撮っていた頃を思い出した。「佐々木くん、普通にしてていいよ。こっちが勝手にシャッターを押していくから。」佐久間さんも黙々と機材をセッティングして黙々とカメラを回す。

夜はまた最初の場所に戻って

花火を待つ。

桜に花火。そうか、「花咲く曲がり角」、あながちない話ではないんだ。



今度時間があったら、佐久間さんとじっくり話をしよう 。

bookends 3  一歩前に出たかな。

1枚目の写真はホテルから見た千葉の海と街

2枚目は江戸川での佐久間さんと。

3枚目は夜の花火と照明の入った桜。

2022年4月6日水曜日

旅日記とインストアライブ




 まずは取り急ぎ、4月15日CDショップ音学処(おんがくどころ)札幌市中央区南3条西3丁目11−2N-MesseビルF1 011-221-0161でインストアライブやります。以前からオーナーの石川さんと店が移転したらライブやりましょうと言ってて急遽実現の運びとなりました。

インストアライブというものはどんなもんだべ?という興味もあったので雪も溶けたし色々自由な気配も見えてきたのでやりますのでよかったらおいでください。しばらくみなさんと近い距離でお目にかかってもいないので。短い時間の中でのライブとなりますが。



「目黒さん、後ろのパトカーのサイレンどうやら俺たちに向かってな鳴ってるみたいだよ。」

「えっ、どうして?何もやってないすよ。」

「うん、多分さっきの交差点の曲がり方について文句あるみたい、もうすぐ『前の車止まりなさい!車を左に寄せろ』、っていうから。」

『前の車の運転手さん、停車お願いします、車を左側の安全なところに止めてください。はい、その前あたりで結構です。』と言われて朝10時目黒さんは赤坂の渋谷に向かう手前で捕獲された。前回6月、羽田の一時停止無視で速攻で捕まって以来連続捕獲。なかなかな確率で捕まる、このシリーズ。目黒さんは堂々として落ち着き払って交通警官と対応している。普通の人ではできないにこやかに中国の超金持ちみたい悠然と切符切られてる。

「ねえ、どうしてあんなににこやかに対応できるの、オラだったら、それなりにキレて文句たらたら、嫌味も相当数垂れて、散々後味悪くして対処するのに。」

「大人ですから、みんなそれぞれに仕事持って働いてるわけですから。」、ふーん知らない間に随分人間ができたなあ、ものすごくまともになったなあ、と思って感動した。しばらく走っていたら道を間違ってまた赤坂のホテルのそばを走っていた。うん、それでいい。ちゃんときちんとキレていた。それでこそ目黒さん。

東京、バック イン タウンのライブ終わったのがこの前の日。今回の東京は合計4日滞在。3日目が空いていたので、久しぶりにどこか北海道じゃないところを探検しようということになり、最初の候補が「鎌倉殿の13人」で盛り上がってる鎌倉行こうかとなったのだが、どう考えても人がどっさりいることはもうわかってるのですぐに変更、2番目は東京から北に上る、とりあえず行けるところまで。それはいいなあ、目的もなくひたすら高速に乗って北に向かう。400キロくらいなら北海道の僕らには計算できる距離、体力の損傷もおおよそわかる、(ただ往復で900キロとなるとtoo muchかもなあ)多分、函館か釧路くらいまでならオーケー。何がオーケーなのかわからないけど東北自動車道探してレッツゴーの最中、最初の一歩で捕獲された。幸先悪いことこの上ない。



遠くに桜の花が点々と咲いている。一昨日まで雪解けが進んでいるとはいえ札幌はまだ冬の名残を未練たらしく残している、その街から時々冷たい風は吹いているけれど春が押し寄せている東北に向かう道は快なのだ。

一台の赤いフェラーリが右側車線をゆったりと走っていく。

「ついていきますか?あいつに。」言うことはかっこいいんだけどこっちはレンタカーのアクアだ。それでも目黒さんは右側車線に出てフェラーリを追走する。きゅんとアクセル踏むとフェラーリのすごいこと、瞬間移動したのかと思うくらい距離が開く。アクアは一応ハイブリット、電気の力も使っていますと言う割には踏めば踏むほどエンジン音がゴーカート化してくる。それと朝のことを忘れてるみたいだ。まあ、いいや。好きにしてもらおう。休日だ。

「昨日のライブですけど、みなさん喜んでいたみたいです。1月のライブが飛んで急遽3月に決まって無事にやれてよかったです。幸男さんも時々歌うまかったですし。」

「リハーサルの時から調子が上がらなくって、時々年齢の限界点に近づいてるんじゃないかと思うことが時々あるんだけど、人の祈りとか願いとか、押し、とか気持ちとかそう言うものをお客さんが用意してくれて、床に敷き詰めて、空気を洗浄してくれることがあるんだと思うことが増えてきているんだ。空気は満遍なく回していくものなんだと、こっちが一方的に送り出すだけじゃないんだな。感謝だぜ。」

後ろから来たCX5が少し煽り気味に僕らの車を抜いていく。右側を走っていた車もかわして左車線に入り込みその車はさらに右に出ようとしていた。

「うん、ちょっと調子に乗ってるし、危ないなあ。」

「注意しに追いかけていきますか?」

「あのね、ダメー。俺ら63と71のジジイだよ。これからは静かに暮らそうよ。」

目黒さんは唸ってた。

この回続く。Part1 終わり

1枚目の写真は今回千葉で撮ったPVの部分

2枚目はフェラーリのスリップストリームに入る僕ら。

3枚目は夕暮れの帰り道、帰りは常磐道。北海道の釧路に向かう高速みたいに暗い道だったけど性に合う。もう一度、今度は一人で誰とも勝負しない旅に来たい。